大橋 功二さん
JICAシエラレオネ支所
企画調査員
※本インタビューは、2021年3月に行ったものです。
大学院で学んだ現場主義の視点を生かし、
日本と途上国の良好な関係づくりに貢献する
2013年 大学院国際協力研究科(IDEC)博士課程前期修了
プロフィール:1997年広島大学総合科学部卒業。1999年広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程前期修了後、大手通信会社に就職。数年間国際電話事業やインターネット事業などに従事したのち、退職。カナダのオタワ大学で国際協力について学び、広島大学大学院国際協力研究科(IDEC)へ進学。在学中に青年海外協力隊を経験。2013年同博士課程前期修了。JICAでウガンダやジブチの企画調査員を経験し、2019年より現職。
本インタビューは…2021年3月に行ったもので、所属先はその時点のものです。
異国で見た新鮮な景色が、国際協力への扉を開いた
私が国際協力に興味を持つようになったのは、社会人になりたての頃に、バックパッカーの友人と海外旅行に行ったことがきっかけです。休暇を利用してネパールやモロッコなど世界各地を訪問。友人に導かれて目にした途上国のリアルな生活の風景は、新鮮という言葉に尽きました。当時私はネットワークという見えないものを扱う通信業界で働いていたのですが、目に見える形で人々の暮らしに貢献できる国際協力の仕事に惹かれるようになりました。
とはいっても、それまで理系分野を専門としていたので国際協力に関する知識はありません。そこで、せっかくなら海外で勉強しようと、カナダの大学で国際協力学を一から修得しました。外国人に囲まれる日々を送ると、おのずと自分のルーツである日本を意識するようになります。経済学や社会学といった基礎科目から、移民・難民や公衆衛生、国連組織や安全保障などの個別テーマまで、国際協力に関するさまざまな分野を学ぶ中で、仕事にするなら日本の強みを生かせるような分野がいいと考えました。そんな時、日本の教育は世界でも優れていると聞いたことを思い出し、教育分野で国際協力に携わることを決意して、広島大学大学院国際協力研究科(現国際教育開発プログラム)へ進学しました。
大学院在学中は、ウガンダでの青年海外協力隊にも参加。現地で2年間、理数科の教員を務めた経験を生かし、修士論文では「効果的な学校運営」について研究しました。ウガンダでは、教員数に対する生徒数や地域の社会経済レベルなど、似た条件を持つ学校でも、子どもたちの学力は異なります。その要因は学校運営にあるのではないかという仮説から、約20の小学校を回り比較分析を行いました。今思い返すと、マネジメントに関する研究テーマを選んだのは、会社という組織で働いた経験が生かされた着眼点だったと思います。
企画調査員は、日本と途上国の間を取り持つ仲人
大学院修了後は、JICAの企画調査員の道へ。これまで約10年間にわたりアフリカで国際協力のプロジェクト企画・監理・評価に従事してきました。業務では、電力や農業など、教育とは違う分野を担当していますが、現地の人々と協働し、1つのプロジェクトを遂行する過程は、大学院で学んだ研究手法そのものです。特に私の指導教官だった先生は実務家の考え方をお持ちで、政策資料や先行文献の分析、フィールドを経験する重要性、統計や調査における客観的な記述の必要性など、実務に即した視点で指導くださっていました。おかげで企画調査員の仕事では大学院での学びを直ぐに生かすことができました。
数ある企業・団体の中でJICAを選んだのは、日本が好きで、日本のために仕事がしたいと思ったから。国民の税金を使って途上国の国造りを支援する、我が国独自の組織団体なので、日本の強みを生かした支援を行うことができます。支援に対する現地の人の感謝は、日本への好感にもつながるため、途上国と日本の良好な関係作りにも貢献していると自負しています。
JICAの企画調査員には決められた任期があるので、その期間で何ができるかを考えることも大切だと感じています(大学院での研究も同じかと思います)。途上国の人々に「JICAと一緒にプロジェクトに取り組むことができてよかった」と感じてもらえるような仕事にこれからも従事していきたいと思います。