井手 遊さん

一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS) AOTS総合研究所
グローバル事業部 事業推進グループ

※本インタビューは、2021年4月に行ったものです。

対等な国際協力・交流により
企業と研修生、双方の成長を目指す

2005年 大学院国際協力研究科(IDEC)博士課程前期修了

プロフィール:2003年広島大学総合科学部を卒業後、広島大学大学院国際協力研究科(IDEC)へ進学。在学中にアメリカのミネソタ大学へ1年間留学。2005年同博士課程前期を修了し、財団法人海外技術者研修協会(現一般財団法人海外産業人材育成協会)(AOTS)に入職、2018年より現職。

本インタビューは…2021年4月に行ったもので、所属先はその時点のものです。

留学を通じた成長を促進したい

 子どもの頃から海外への関心が強く、高校生の時には奨学生としてアメリカへ1年間留学しました。その後、学際的な学びを求めて広島大学の総合科学部に入学。学部では英語を専攻し、異文化適応とソーシャルスキルについて学術的に研究し、再びアメリカへ留学しました。2回の留学では、英語が通じなかったり差別的なことを言われたりとつらいこともありましたが、より専門的な勉強を行い、海外の教員や地域の人々と親交を深め、知識面・人脈面ともに成長することができました。この経験から、海外の高等教育機関と日本の大学間の留学を促進したいという気持ちが生まれ、留学の際にお世話になった堀田泰司先生のもとで大学の国際化について学ぼうと広島大学大学院国際協力研究科(現国際教育開発プログラム)へ進学しました。

研修開講式でのあいさつ


 国際協力研究科では教育文化専攻の高等教育交流講座に所属し、日本の留学生政策の歴史や、単位互換制度など留学生を日本に迎える仕組みづくりについて学びました。その中で、留学生を受け入れる研究室や日本人学生の負担が大きくなってしまうことから、留学生を呼ぶことが本当に日本の大学にとって望ましいことなのか疑問に感じるように。そこで、学生が負担以上のメリットを得ているか否かを調べるため、留学生との関わりを通じた英語力向上やグローバルな価値観の獲得などについて研究しました。

インドで実施した研修の参加者と


 所属講座の授業のみならず、異文化コミュニケーションや教育開発など他コースのさまざまな授業も受講しました。幅広い分野を勉強して得られた国際協力に関する学際的な知識は、今の仕事に生かされています。また、学友の多様さも国際協力研究科の特徴の一つ。人生を懸けて国際協力に携わろうと考えている人が多く在籍しており、研究室外でも活発にディスカッションをしていました。青年海外協力隊や社会人経験のある方々の知見はとても刺激的で、志の高い人々と学びを深められたことは良い経験だったと感じています。

国際協力で企業の人材育成を担う

職場の前でお世話になっている通訳さんと

 国際協力研究科の博士課程前期を修了後、財団法人海外技術者研修協会(現一般財団法人海外産業人材育成協会)(AOTS)へ入職しました。AOTSは主に開発途上国の産業人材を対象に研修を実施し、日本の民間企業の海外展開をサポートする機関です。留学が個人の成長につながると学生時代に学び、国際協力・交流による人材育成を通じて社会の役に立ちたいと考えて志望しました。就職活動で大切にしていた観点は「フラットである」こと。国際協力研究科の学友と、「交流」とはお互いフラットな立場で行われるべきものではと議論していたのです。上から目線で「支援」するのではなく、お互いを尊重して「交流」することで、双方が高め合えることに気付きました。この考え方は外国人研修生と日本企業の関係にもあてはまります。研修生を一方的に教育するのではなく、彼らを尊重してアドバイスしたり、優れている部分から学んだりすることで、より良い関係を築けると感じます。

研修実施中の一枚


 現在は日本人の海外インターンシップ事業を担当し、AOTSが長年培ってきた研修のノウハウや海外のネットワークを生かし、日本企業の若手社員や大学生のインターンシップなどのプログラムを提供しています。新型コロナウイルスの影響により、外国人研修生や日本人インターン生が海外を行き来できなくなりました。オンラインでの研修も運用されていますが、対面でしか得られない経験もあるため、対面とオンラインの双方の長所を生かした仕組みを作りたいと思います。私の座右の銘に「セレンディピティ」(偶然起こった幸運をつかみ取る)というものがあります。私の現在のキャリアは、留学などのチャンスをつかみ取ってきた結果です。常にアンテナを立てて注意し、巡ってきた幸運を逃さないよう、コロナ禍でも前向きに、新しいことにチャレンジしていきたいと思います。

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