隅田 姿さん

広島修道大学 国際コミュニティ学部
准教授

※本インタビューは、2021年3月に行ったものです。

国際協力への関心から研究者の道へ。

より効率的な教育開発を考える

2018年 大学院国際協力研究科(IDEC)博士課程後期修了

プロフィール:アメリカの日系旅行会社で4年間勤務したのち、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校大学院で公共行政の修士号を取得。広島大学大学院国際協力研究科に進学後、博士課程前期・後期を修了。日本学術振興会特別研究員、ニューヨーク州立大学客員研究員、日本学術振興会海外特別研究員、広島修道大学国際コミュニティ学部助教を経て、2021年より現職。

本インタビューは…2021年3月に行ったもので、所属先はその時点のものです。

援助の現場と日本で培った、実践的な力

 大学ではマーケティングを学び、卒業後はアメリカの日系旅行会社に就職しました。ところが民間企業の利益を優先にする理念に疑問を抱くようになり方向転換を考え始めました。自分が本当に興味のあるものは何だろうと探していくうちに、次第に国際協力に興味を持つようになりました。そこで、会社を辞めて一念発起し、アメリカで公共行政の修士号を取得。その後地元広島に戻り、さらに学びを深めるために広島大学大学院国際協力研究科(現国際教育開発プログラム)に入学しました。

 国際協力研究科では、「教育援助の効果」を研究テーマに選びました。私たちが行っている途上国への援助は果たして、本当に役に立っているのかという疑問から研究したいと思ったのです。現場を知るために、2年間休学して在モザンビーク日本国大使館の経済協力調査員として働いた後、その後政策レベルの知識を得るため、大学院のプログラムを活用してフランスのユネスコでインターンシップに参加したりしました。さまざまな実務経験をして学んだのは、効果は簡単に測れるものではないということでした。何をもって効果があったというのかは難しい問題で、ある人や国においては効果的であったとしても、違う人や国では環境や考え方が違うので、同様のことが言えるとは限りません。研究を通じて、効果の有無よりも、客観的、多角的な視点から課題を分析し、理解することが重要だと実感しました。

 モザンビークやフランスでの勤務では、大学院の授業やゼミでディスカッションをした経験が大いに役に立ちました。国際協力研究科には世界中の国から多様な学生が集まります。文化や考え方の違いのためディスカッションをしても話がまとまらず、要領を得ないことが多くありましたが、それぞれの意見を的確に把握し、必要な説明を加えることで、建設的な議論にすることができました。このようなスキルは、さまざまな国籍の人が関わる国際協力の現場では必須のスキルです。

途上国の教育開発を研究によって支える

 現在は広島修道大学で、大学教員として勤務しています。少人数クラスのゼミでは私の専門である教育開発に関する論文指導を、大人数のクラスではグローバル・ガバナンスや国際協力の概論を教えています。学生には学ぶ楽しさを知ってもらいと考えています。そのためにも、大学院時代に受講した授業を参考に、ゲームやディスカッションを通じた分かりやすくて面白い授業を心掛けています。私自身、もともと勉強はあまり好きではありませんでしたが、アメリカ留学、インターンシップなど色々な世界を見ることで、世界の動きや社会の問題に関心が湧き、大学院への進学を経て、学ぶことの楽しさを知りました。大学は様々な知識や経験が得られ、探求心が多く刺激される場所です。たくさんの知識に触れ、たくさんの経験をすることで、学びへの関心に繋がればと思っています。

 研究分野においては、引き続き効率的な教育開発の在り方を追究し、国際社会に貢献したいと考えています。国際協力を志した最初のころは、途上国の子どもたちのために現場のプロジェクトで働きたいと思っていましたが、現在は研究者として政策への提言などをしていきたいと思っています。今後は、これまでの教育開発の効果に関する研究に加えて、途上国の教育政策の比較分析も行っていきたいです。

修了生インタビュー一覧に戻る
PAGE TOP